海には、リップカレント(離岸流)と呼ばれる危険な波があります。リップカレントについての理解を深めることは海難事故防止に繋がります。
オープンウォータースイミングを始めたばかりの方は、必ずリップカレントについての理解をしましょう。
海の驚異を知る、海での事故件数
年間で考えると海での事故はかなりの頻度で起きています。オープンウォータースイミングを始めた目的は様々だと思いますが健康のため、あるいは趣味など…せっかく始めたのに後悔することがないように対策をしましょう。
警察庁生活安全局生活安全課の公表している資料では平成30年の海での水難事故では、371人が死亡事故、行方不明となっています。
これだけの事故が起きている理由としては、緊急時の対策をしていなかった。天候や、海の流れなどを考慮しなかったというものがあげられます。
(1) 全国の発生状況
平成30年の水難は、
○ 発生件数 1,356件 (前年対比+15件)
○ 水難者 1,529人 (前年対比-85人)
うち死者・行方不明者
692人 (前年対比+13人)死者・行方不明者692人について
海 371人 (53.6%)参考:警察庁生活安全局生活安全企画課
死者、行方不明者の行為別数を見てみると、泳ぐことを想定していない方の死亡、行方不明率が目立ちます。水泳中の事故は全体の7.4%となっており、やはり泳ぐことを想定している方の多くは対処をされているのではないかと思います。
海で泳ぐという心構えと事前の対策で事故は防げます。そのためにも海の特性や、対処を考えておくことが大切です。
海難事故の60%はリップカレント
海難事故の60%がリップカレントという、危険な存在。リップカレントの存在を知ることで、事故に合う確率を単純計算ではありますが、半分以上減らすことができます。
もちろん体調管理や天候の動きを知ることも大切ですが、まずはリップカレントについて理解しましょう。
リップカレントとは?
波が連続して浜に流れ込んで来る状況になると、流れ込んできた海水はまた沖合に流れて行きます。しかし、波は次から次へと来るので、行き場を失った海水は沿岸を沿って流れていきます。この沿岸を沿って流れた海水が一箇所に集まるスポットがあり、このスポットに集まった海水は、沖合に向かって流れ始めます。この流れ(離岸流)のことをリップカレントと言いますが、時速7km程の強い流れになります。
このリップカレントにのまれてしまうと簡単には逃れることができません。溺水事故の60%以上は、リップカレントと言われており、リップカレントが危険な存在ということがわかります。
リップカレントの発生場所の把握、リップカレントにのまれた場合の対処をあらかじめ把握しておくことが大切です。
リップカレントの把握
リップカレントが発生する場所は、浜に向かって流れてくる波とは逆の方向に波が向かうスポットです。とてもわかり易い画像があったので引用します。
初めてのシュノーケリング:リップ・カレント図解
波の逃げ場がリップカレントということです。
また、サンゴ礁が密集している場所だと、サンゴ礁間の隙間から海水が沖合に向かって流れようとするので、一度波の流れを観察する必要があります。
流されてしまったら…
波の流れに完全に逆らうように泳ぐ場合、世界レベルの水泳選手でも時速8km程なので超人レベルの泳力を持っていない限りは、逆らって泳いでも体力を無駄に消耗することになります。
まずは、冷静に流れを感じ流れに対して水平に泳いでいくことが唯一の対処法です。
日本ライフセービング協会:リップカレントに気をつけよう
自分の身は自分で守る意識を持つ
リップカレントについて簡単に解説しましたが、どんなに気をつけていても誤ってリップカレントにはまってしまう可能性は十分にあります。
オープンウォータースイミング大会では、決まったルートを泳ぐことになりますが、日頃の練習では自己責任になってしまいます。
万が一リップカレントに流されてしまっても、エマージェンシーフロートを装備しておけば、安心感から冷静に判断ができ、安全に対処ができるのではないでしょうか?
エマージェンシーフロートの大会使用制限については、参加希望の ”大会名” + ”規定”
検索例:「湘南オープンウォータースイミング 規定」
というように一度調べる必要があるのでご注意ください。
ちなみに湘南オープンウォータースイミングでは、練習グッズとしてエマージェンシーフロートを推奨しております。日頃の練習や使用可能な大会では自身の安全のためにもエマージェンシーフロートの導入を検討してください。
エマージェンシーフロートとは?
エマージェンシーフロートは、ポリウレタンで作られた浮き具です。耐久性に優れており、より軽量でサイズは、65cm×32.5cmと小さいです。しかしこのサイズから想像できない浮力があり体重100kgの方が使っても沈むことはない強い浮力を持っています。
ベルトを着用しエマージェンシーフロートを引くようにして泳ぐ形になります。
エマージェンシーフロートを携帯するメリットは、緊急時の浮き具というのは、もちろんですがオープンウォータースイミング大会では、エマージェンシーフロートが個人の視認性をあげてくれます。
他の記事でも、視認性はオープンウォータースイミングをする上で重要な要素だとお話しましたがライフセーバーから見えるような視認性が大切です。
またエマージェンシーフロートは浮き具でもありますが、バッグでもあります。
EMERGENCY FLOAT(バッグ型救命補助浮き具)
商品名としては、バッグ型とあります。練習の際は貴重品も肌身離さず携帯したいですよね。バッグなので当然収納ができます。
携帯電話や財布などの貴重品をエマージェンシーフロートに収納し、海での遊泳練習にも使えます。
自分の力を俯瞰する勇気、判断力
日本水泳連盟の認定しているオープンウォータースイミング大会では、日本ライフセービング協会が認定したライフセーバーを監視に当てることが義務付けられています。
と、別の記事でもご紹介しましたがその情報は、多くのオープンウォータースイミング大会のガード業務に携わっている石井さんに取材をさせていただき知りました。
数多くのオープンウォータースイミングのガード業務にあたっていた、ライフセーバーサイドのお話の中で特に頭に残っているものがあります。
とても気持ちはわかります。ベテラン勢が大勢いる中で ”初心者です” と掲げている様な気持ちになってしまうのかもしれません。
しかし普通のスポーツと違い、オープンウォータースイミングは険しい自然が相手になるスポーツです。
自分の実力を俯瞰し、何が必要なのかを理解し実行することは恥ずかしいことではありません。自分の実力にあったやり方を模索していきましょう。
まとめ
今回は安全にオープンウォータースイミングを行うために、リップカレントという危険な流れがあるということについて、お話しました。
リップカレントは、沖合に流されてしまう強力な波です。人の力では流れに逆らっても逃れることはできません。冷静に判断し、流れの終息地まで流れに身を任せ体力を温存してください。流れが止まったら流れの方向に対し90度の方向へ泳ぎ流れから逃れるように泳ぎましょう。
もし流れにのまれてしまった場合でもエマージェンシーフロート(浮き具)を装備しておけばいざというときは、それに掴まり冷静になることができるのではないでしょうか?また流れの終息地から浜まで泳ぐ際の体力を温存することができます。
一方で、エマージェンシーフロートの利用が禁止されている大会もあります。あらかじめ利用が可能なのか調べておく必要があります。
オープンウォータースイミングでは自分の実力を俯瞰し、必要な技術の習得や道具を用意することが大切です。
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